離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます

　秘書の山吹に、頷くと、彼は少し困った様な顔をした。

「…… 奥様の事は、どう致しますか？　」
　
　奥様……？　

　チラリッと、白鳥の顔を見る。

　イヤイヤ、やはり、好みのタイプではない……。

　どちらかと言えば、生理的に受け付けない……。

　彼女には申し訳ないが、妻として、パーティーで紹介するのは、何故か気が進まない。

　彼女の良い所を思い出すべく、頭をフル回転させる。

　だが、しかし……。

　何故か、彼女がお客様にお茶と称して、ペットボトルや、缶コーヒーをドンッと、テーブルにそのまま置いていた事や、データー打ち込みを指示すれば、ネイルが剥げると言って騒ぎ出した事が浮かんで来た。

　ウーム……。

　俺は、精神的に自立した女が、タイプの筈だ……。

　秘書としても、妻としても、全く良いと思えない白鳥を、何故側に置いているのか、全く理解が出来ない……。

　大丈夫か？！

　記憶を失う前の俺？！


「私は、お義母様から、頼まれてますから、勿論、一緒に参加し、ま、す、わ」

　俺の鼻を人差し指で、チョン、チョン、チョンっと、突きながら、アヒル口で近付く、白鳥にゾワッっとする。

「ですが、奥様は…… 」

　山吹が、口を開いた瞬間、白鳥がダンッっと、彼の足を思いっきり踏みつけた。

「ギャアッ！！　」

「わ、た、し、が、パートナーよ！！　」

　ギロリッと山吹を睨み付け、言い放つ白鳥に、ハーーーーッと、溜息を吐く。

「…… 時間がない…… 支度するぞ　」

　本当に彼女が妻だと言うなら、これが終わったら、即離婚だな…… と、頭の中で独り言ちる。