離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます

「…… ごめんなさい、帰国したばかりで、まだ部屋が決まっていなくて…… 」

 んんっ?!

 何を言っているんだこの女は?!

 訳がわからず、女の顔を見ようと、薄暗い灯りの中、ジーッと相手を見つめた。

「…… どう言う意味だ? 君は、ここに住んで…… いるのか? 」

 緊張で、額に汗が吹き出て来る。

「…… 直ぐに、出て行きますから」

 逃げようと、女は抵抗する。

「質問に答えろ! 」

「キャアッ! お願い…… 乱暴はしないで……っ! 」

 どんなヤツか、顔が見たくなり、ベットサイドの灯りパチッと点ける。

 その隙をついて、女が身を捩ったと同時に、バサっと、ベットから何かが落ちた。

「…… ?! 」

 自分の目を疑い、それを拾いあげ、ジーッと見つめる。

《母子手帳》と表紙に大きく書かれていた。

 腹に赤ちゃんがいるのか……。

 さすがに妊婦に手荒な真似は出来ない、と、手を離す。

「…… すまない、手荒な事して…… 怪我はないか? 」

「いえ…… 大丈夫です」

 声の主に顔を向けて、ドキンッと心臓が跳ね上がり、俺は固まった。

「…… えっっ?!! 」

 何故、彼女がここに?!
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