離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 離婚届を手に、彼女の元へ戻ると、恐ろしい提案をされた。

「どうします? 今から二人で時間外受付に行きますか? それとも、明日私が、提出しに行きましょうか? 」

 何を言っているんだ?!

 却下だ!!

「…… いや、離婚届は提出しない」

「え? 」

 驚く彼女に驚き、ハッとする。

 …… 離婚届を出すぐらいだ、彼女と俺は上手く行ってなかったのか?!

 原因はなんだ?!

 まさか?! 俺の浮気?!

 白鳥の顔が浮かび、ブルっと身の毛がよだつ。

 断じてない!!

 甘え、与えられるのが当然だと、自分の力で立っていられない女は、好みではない。

 記憶があったとしても、好みは絶対に変わらない筈だ!!

 じゃなきゃ、この開かずの間のコレクションの説明がつかないだろ?

 さっき見た光景を思い出して、顔が赤く火照るのを感じ、慌てて掌で顔を隠し、確認する。

 うむ、恥ずかしい…… 。

「あ…… その…… 俺と、君は、恋愛結婚…… だったのか? お、俺は君を、あ、愛していたのだろうか? 」

 思い切って、ズバリ聞いてみた。

「…… おそらく……?  」

  んんんっ? なんだその曖昧な返事は?!

「幸せだったのか? 」

「…… たぶん…… ? 」

 たぶん?! 愛が足りてなかったのか?!

「…… 君は? 君は俺を、あ、愛してたのか? 」

 この俺が、愛を問う日が来るとは…… 。

「…… 二番目に幸せだと、思えるくらいには…… ? 」

 何故一番幸せだ、と言わない!

 うぐぐぐぐっーーーーっ!!
 
 記憶を失う前の俺に、説教したい!

 愛が過ぎる程、愛せよ!!

 
 俺なら…… 、今の俺なら何よりも、誰よりも一番に君を愛するのに…… !

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