離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 
「…… なんか、蓮斗さん、おかしくないですか? 」

 彼女が口を尖らせ眉を顰める。

 うぐぐっ、なんだその顔は!?

 唇を摘んで、プニプニしたい!


「…… 申し訳ない。 実は、君に妻だと言われても、私には、いや、俺には君が、誰だかわからないんだ」

 それでも、俺はすでに君に夢中だ!

 目が覚めたら、どストライクな妻がいるんだぞ、ラッキーとしか言いようがない。

 俺は、記憶喪失の事を打ち明けた。

 「え? ええ?! 」

 まあるい目を更に大きくさせて、俺を見つめる。

 彼女の名前を呼びたい!

「…… すまない…… 君の名前は? 」

 愛しい人の名を、忘れてしまった自分に、腹が立つ。

「シエナ…… 剣菱シエナ」

「シエ…… ナ…… 」

 そうだ、確かに、薄れゆく意識の中で誰かの名前を呼んだ。

 白鳥めーーーーっ!!

 「ユイナ」と「シエナ」、「ナ」しか合ってないくせに、お前の名前を呼んだと勘違いさせやがって!!

 思わず険しい顔になった俺に、シエナは距離を取る。

「それは、大変でしたね。 何も知らなくて……、 力になれなくて、ごめんなさい。 でも、これからは、支えてくれる人がいるので心強いですよね。 記憶が戻らなくても、きっと、大丈夫…… 」

 何を言ってるんだ。

 支えてくれる人? お前しかいないだろ?

 いや、お前しか頼りたくない。

 記憶が戻っても戻らなくても、俺はお前しか愛さない。

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