離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「今日は仕事出るのか? 」

 朝食を口に運びながら、予定を尋ねられる。

「へ? もちろんです」

 キョトンとして首を傾げる私に、蓮斗さんは心配そうな顔をする。

「もう、産休取った方が良いんじゃないか? もし、転んで、お腹の子に何かあったら…… 」

「アハッ、まだ早いですよ。 産休も育休も有りますから利用させて貰って、臨月まで働くつもりなので、暫くは頑張り…… うっ……! 」

 油の匂いが鼻につき、ムカムカして、吐き気が込み上げる。

 バタバタッと、慌てて洗面所に向かう。

「ウヴッ……ッ、ぎもぢ悪い…… 」

「大丈夫か? やっぱり仕事は、休んだ方が良い」

 蓮斗さんが、優しく背中を摩ってくれる。

「いえ、行けます。 急に休んだりしたら迷惑ですし、職場の皆んなに妊娠報告もしてないですから。 それに…… 今まで通り過ごした方が、蓮斗さんの記憶を取り戻す、きっかけが見つかるかもしれませんし…… 」

 そう言って、私は蓮斗さんを、チラリッと見る。

(……記憶が戻るまでは、側に居ますけど、私は忘れていないんですからね。 蓮斗さんが白鳥さんと、キ、キスしていたの。 浮気した人と、夫婦生活は続けられないんですよ)

 考えたら、ムカムカが更に強くなって、気持ち悪さが酷くなる。

 (白鳥さんを触った手で、私に触れないで! )

 嫌悪感が増して、蓮斗さんにも白鳥さんにも、ドロドロとした、嫌な気持ちが湧き上がってくる。

 蓮斗さんを思わず、ムムッと睨む。

「着替えて来ます」
 
 そう言って、やんわりと距離を取った。


 











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