離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 帰り道の電車は地獄だった。

(いつもは全然気にならなかったのに、そこら中の匂いが気になって、ずっと船酔いしているみたいで気持ちが悪い。 悪阻がこんなに辛いものだったなんて…… )

 蓮斗さんの毎日の、気遣いと優しさ、そして送迎の有り難さが身に染みる。

 ハンカチで口元を押さえ、匂いを遮断してフラフラになりながら、どうにか帰宅した。

 着替えるのもしんどくて、そのままベットに横になる。

 徐に、お腹に手を当てる。

(悪阻で辛いのも、妊娠したからこそ体験出来る事なんだよね…… )

 妊娠出来なくて、毎月生理が来るたびに落ち込み、こっそりと泣いた。

 たくさん悩んだ日々が、次々と思い出される。

 お腹の膨らみはまだまだないけれど、体調の変化にジンワリと、妊娠を実感して頬が綻ぶ。
< 157 / 205 >

この作品をシェア

pagetop