離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
(だけど…… どうしよう…… )
自分の気持ちがわからなくて、迷っている。
(産みたい…… 産む! 何回考えてもいつも同じ答え。 やっと授かった命を大切に育てたい。 そう思うのに…… 揺れる)
悪阻で仕事もままならない。
頼みの旦那は記憶喪失で、浮気していて、私に気持ちはない。
なのに、最近の記憶を取り戻す為の、仮初の夫婦としての、蓮斗さんの態度に勘違いしそうになって、再び離婚を言い出す勇気もない。
ううん、離婚したら、元旦那の会社で働くなんて出来ないから、仕事も変えて、就職活動しなきゃならない。
一からやり直しだから、今よりも確実に、収入は下がる。
新しい職場に馴染みながら、赤ちゃんと二人で生活なんて出来るの?
ナイナイ尽くしであるのは、嫉妬にまみれた私の蓮斗さんへの愛。
案外、未練たらしいな……、と自嘲する。
(こんな母親の元に産まれて、この子は幸せになれるの? 私は、一人になって、この子を育てていけるのかな? )
何が正解で何がダメなのか、何度考えても、答えは出ない。
不安だけがドンドン大きくなる。
(20週までには決めないと…… )
疲労感を感じて、少し眠ろうと、瞳を閉じる。
「プルルルル……ッ、プルルルル……ッ」
携帯の着信相手を確認して、はあーーーーっと深い溜息を吐く。
「ゆっくり、休ませては貰えないのね…… 」