離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「ウッ……ッ」
白鳥さんが部屋中を歩き回ったせいで、彼女のつけている、強い香水の匂いが部屋中に充満して、吐き気が込み上げて来た。
慌てて、洗面所に向かう。
「あらあらあら?! なぁに? もしかして…… 、もしかして、貴方、妊娠したんじゃないの?! 」
洗面所まで付いて来た、お義母様が嬉しそうな声を上げる。
「病院へは行ったの? 」
目を爛々と輝かせて、期待に満ちた視線を向けられる。
「…… まあ…… 」
観念して、渋々返事をする。
「本当なのね?! 何で早く報告しないのよ! …… 仕方ないわね、子供が出来たなら、離婚は取り止めにして良いわ。 ああ、女の子はダメよ! まず最初に産むのは、絶対に男の子よ! 貴方少し顔がキツくなったから、絶対に男の子よ! 長い事、待たされたけど、やっと剣菱家の跡取りの誕生ね」
(女の子はダメって…… 、いつの時代よ?! )
お義母様は相変わらず、勝手な事を言って、グイグイっとプレッシャーを掛けて来る。
「今日こそは、キチンと離婚の話を進めたいと思っていたけど、妊娠したなら、話は変わるわ。 本当に、ほんっーーーとに、別れる寸前になってやっと、貴方も、剣菱家の嫁としての務めを果たしたのね」
子供が出来た途端、掌を返した様な態度に悲しくなる。
「捨てられる前で、良かったわね」
恐ろしいセリフを吐きながら、微笑むお義母様にゾッとする。
(孫を産んでくれるなら、誰でも良いの? 私は、子供を産む道具じゃないのに…… )