離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「…… 白鳥さんと蓮斗さんは、どうするんですか? 」
今更、愛し合っている、二人の間に入って行くなんて、そんな事出来ない。
かと言って、このまま、見ないフリして側に居れるほど、気持ちの整理も出来ていない。
じゃ、白鳥さんと闘う?!
勝ち目のない争いをする意味が見出せない。
好きあっている二人を引き裂いて手に入れた愛は、きっといつか無理が生じてくる。
「正妻と愛人で良いじゃない。 正妻だからって愛されてるとは限らないし、愛人作るなんて、よくある事よ」
しれっと答えたお義母様に、心の奥底から怒りが湧いて来る。
(…… どれだけバカにしたら、気が済むの…… ?! )
「先に妊娠したから、貴方には正妻の座を渡す様に、私から結菜さんには上手く言ってあげるから、立場を考えて、結菜さんに楯突く様な事はしない様になさい」
「……帰って……下……さい…… 」
震える手を握り締めて、喉の奥から声を絞り出した。
「なあに、急に? 」
「気分が、悪いんです……。 帰って、貰えませんか? 」
失礼だとわかっているけど、限界だ。
もう、顔も見たくない。
これ以上、嫌いにならせないで欲しい。
「まあ、いいわ。 大事な孫に何があったら大変だもの。 ゆっくり休みなさい」
珍しく、お義母様は素直に引き下がった。
「結菜さん、帰るわよ! 結菜さん? あら、居ないわ。 先に帰ったのかしら? 」
お義母様を見送り、怒りで、血の気が引いて貧血を起こした。
落ち着く為にスーハー、スーハーっと深呼吸を繰り返して、ソファーに座ったが、体調の悪さと、妊娠の特有の眠気が襲って来て、私はそのまま眠りに落ちてしまった。