離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
執着
(…… 蓮斗さん…… ? )

 ペタペタと歩く人の気配を感じて、「お帰りなさい」を言おうと目を開けようとするが、白鳥さんの強烈な香水の残り香が、部屋中を支配していて、気持ち悪いのと、妊娠から来る眠気が合間って、トロトロッと微睡んで、再び眠ってしまう。



 
 どのくらい経ったのか、フワッと身体が浮く感覚を覚えて、目を開けると、頭の上に見覚えのある、無の表情に優しさを滲ませた、蓮斗さんの顔があった。

「あ…… 」

 久しぶりに見たその表情に、思わず手を伸ばし、頬に触れた。

「起きたのか? 」

 無の表情から、優しく微笑む笑顔に変わる。

 「はぅっ! 」

 キラースマイルを向けられて、これはこれで、心臓がキュンとしてしまう、チョロい私がいる。

(離婚しなきゃと言いつつ、トキメいてる私、意志が弱すぎるな…… )

 慌てて手を引っ込めようとして、自分の状況に気づいて固まる。

「は、離して下さいっ…… 」

 ベッドに横たわった私に、膝をついて、一緒になって横になっている。

 蓮斗さんは、私の腰を抱え込み、上から顔を覗き込んでいた。

 「早退したと聞いて、慌てて帰って来たら、ソファで寝ていたから心配した。 身体が随分と冷えてしまっていたからな、ベッドへ移した」

(な、なんだ、温めてくれようとしたのか…… )

 一人寝が多かったので、未だに、隣にいる蓮斗さんにドキドキッと、トキメいてしまう。

 蓮斗さんは、頬に張り付いた髪をすくって、チュッとキスを落とす。

 頬を撫でられ、額にチュッとキスを落としたかと思うと、チュッと鼻に、そして頬にチュッとキスを落とす。

長い睫毛が伏せられ、整った顔が近付き、思わず口元を掌で隠す。

蓮斗さんが気がついて、私の顔を覗き込むと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべで、ペロリッと私の掌を舐めた。

「ひゃあっ!」

 声を上げた私を、揶揄う様にペロペロっと、わざと何度も舌を這わす。

「やめっ……っ」

 手を離すものかと必死で抵抗する私に、蓮斗さんは、アーンッと口を開けると、そのまま、ガブッっと噛みついた。

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