離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「キャアッ! 」

 驚いて手を離すと、待ってましたとばかりに、噛み付くように唇を塞がれた。

「んんっ! 」

 すぐさま、唇をこじ開けて舌が滑り込み、口内を貪り始めた。

 舌を絡め取られ、口蓋を舌をツーッと丁寧になぞられ、チュクチュクッと舌を吸われる。

「ふぅ……っ…… んぅっ…… 」

 苦しくて、蓮斗さんの胸をグイッと押して離れようと試みるが、顎を掴まれ、更に激しく、喉の奥まで舌を貪られる。

「ぅんっ……、 っんんーーっ! 」

 唇から溢れた涎をペロリと舐めとり、唇が離れた頃には、すっかり思考は蕩かされて、身体は火照り、酸素を取り入れようとハッハッと小さく肩で息をする。

 可愛い抵抗に煽られ、蓮斗さんの手が首から鎖骨、鎖骨から胸へと下りていく。

「あ……っ、 んっ…… 、ああっ…… 」

 膨らみの感触を確かめるように、ムニュムニュと愛撫され、ビクリッと、湧き上がる気持ち良さに身体を震わせると、蓮斗さんが艶っぽい掠れた声で囁いた。

「ああ…… シエナ、こうして触れるのはいつぶりだ? 堪らない…… 可愛い声をもっと聞かせろ」

「やっ……、ダメ……っ、待って…… 」

 身を捩って逃げようとする私に、蓮斗さんは眉間に皺を寄せて、不満気に口を尖らす。

「悪いが待てない。 それに、記憶を取り戻すには、記憶を無くす前にしていた行動をするのも効果的だと、医者が言っていたからな。 協力するだろ? 」

 ニヤリッと、悪戯っ子のような顔をして笑う。

「ううーーっ……っ、こ、ここでお医者様を持ち出すとは卑怯な……! 」

 口を尖らると、ハムッっと、唇で甘噛みされる。

「そんな顔をしても煽るだけだ。 なんだろうなこの感情は? 記憶はないのに、心の奥底からシエナを愛しいと、愛していたと、切ない気持ちが湧き上がって来る 」

 唇をツーーーッと、撫でながら吐息混じりの声で囁く。

「……愛している」

「……っ! 」

 甘い眼差しを向けられて、トクンットクンッと、気持ちが弾む。

 ああぁ……、このまま、蓮斗さんの胸に飛び込んで行きたい。

 でも……。

 私は、奥歯をグッと噛み締め、口を開いた。




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