離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます

「産ませないわっ！！　」

　甲高い女の声が部屋中に響いた。

　ズル…… ズル…… ズル……っと、ベットの下から身体を引き摺る音が聞こえたかと思うと、乱れ髪の女が這い出て来て、ギギギッと首を動かして、こちらへ向かって近付いて来た。

「イヤァァァァーーーーッ！　お、お化けっーーーーっ！？　」
「ヒッ…………ッ？！　」

　女は手を伸ばして、私の腕を掴み上げて、グイッと、勢いよく引っ張った。

「キャアァァッ……！！　」

　ドサッっと、ベットから引き摺り出され、前のめりに転げ落ちる。

　咄嗟に手でお腹を庇い、顔面を床に打ち付けた。

「ウッ……ッ！　」

「シエナッ！！　」

　慌てて、抱き起こそうと近づいた蓮斗さんに、ニヤリッと、満面の笑みを浮かべ、お化けは抱き付いた。

「ああ〜んっ、私、ずっと蓮斗さんの帰りを待ってましたのよ。　なのに、ちっとも気が付いてくれなくて待ちくたびれて、眠ってしまいましたの」

　顔を摩りながら、縋り付いている人物を、マジマジと見ると、見覚えのある顔が髪の隙間から除いていた。

「し、白鳥……さん？！　」