離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 何故そんな誤解が起きたと、行動を思い返して、ハッとした。

「あっ! いや、まさかと思うが……。 中庭を横切ろうとした際に、白鳥が転びそうになった所を支えた時は、俺から触れたが…… あれは、不可抗力だ。 そういう意図ではない」

 必死に誤解を解こうと説明するが、シエナは納得していない様だ。

「で、でも、白鳥さん本人もお義母様も蓮斗さんに相応しいのは、彼女だと仰ってますし、何よりも、記憶喪失になってから、一番に頼ったのは白鳥さんですよね? 」

「…… 頼った、と言われたらそうだな。 病院で目を覚ました時に側にいた相手に、妻だと言われたら、好みはどうあれ、信じるしかなかった。 いや、正直、数日一緒にいただけで、非常識なあいつの行動や言動には、嫌悪感が湧いてきた。 これっぽっちも認めたくなくて、いつ離婚を切り出すか、そればかり考えていたがな」

 あの時の状況を思い出して、シエナが傍にいたら、こんな誤解をさせなくて済んだのにと、悔しく思う。

 こんな思いは、もうたくさんだ。

 絶対に、逃がさない。

 怖いくらいの執着心が、俺を捕らえて離さない。

「……すまない……、俺は記憶を失ったとしてもシエナ……、お前を手放してはやれない。 何度、記憶を失ったとしても、俺はその度にお前を愛すると、約束する 」

 
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