離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
生理的な涙なのか、この感情の篭っていない、冷え切った夫婦生活を嘆いてなのか、瞳からポロッと一筋涙が溢れた。
「……っ! ……そんなに嫌、なのか…… 」
彼は片眉を上げ小さく呟くと、ハッと苦笑を漏らした。
「……ちがっ……! 」
誤解されたくなくて、思わず声を上げる。
一度溢れてしまった涙は、ポロポロと次々と溢れ出してシーツを濡らす。
(泣くな泣くな!!)
泣き顔を見られたくなくて、蓮斗さんの肩に顔を埋める。
怒りと苛立ちからか、少し乱暴に腰を掴むと、蓮斗さんは何度も奥へ進む。
甘い囁きも吐息もない、静かな部屋には、ベットの軋む音とシーツの擦れる音、そして荒い息づかいだけが、響いている。
(愛を深めるための触れ合いなのに…… いつからこんな義務的な行為になってしまったんだろう…… )
胸がキシキシッと痛んで、また涙が溢れてくる。
今日でこの想いとは、決別しなくちゃいけない。
心の痛みか、身体の痛みか、私は顔を歪ませた。
(まだ、こんなに愛しているのに…… だから…… )