離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「やめてくれないか」
スッと手を払うと、ハァーーーーッッと、盛大に溜息を吐いた社長は、クイッっと眼鏡を持ち上げ、全く感情の籠らない、無の顔と声で、ハッキリと彼女に告げる。
「何でもすると言う人に限って、何にもしないからな。 それに簡単に手に入る物は、面白くない。 君は、私が社長じゃなくなっても、付いてくる覚悟があるか? 今の贅沢な生活を、捨てる事が出来るのか? 」
社長は、チラリッと私を見る。
(…… ええ、ええ、しがないサラリーマンの私は、庶民ですから、セレブとは贅沢の基準が違いますよ。何の問題もございません)
「わ、私を試すんですの?! お母様〜っ、蓮斗さんが意地悪言いますぅ〜っ 」
「蓮斗さん、私は認めませんよ! そんな何処の馬の骨とも分からない女を、妻にするだなんて!! 剣菱家の品格が落ちるわ!! 」