離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「プルルルー、プルルルー、プルルルー…… 」
携帯の着信音が部屋中に、鳴り響いた。
急いで涙を拭い、携帯を手に取り着信相手を認識した直後、ドキリッと身体がこわばった。
(ハァーッ……、 またか…… )
悲しみに更にのしかかるように、気分が重くなる。
暫く携帯を見つめていたが、プルルルー、プルルルー…… と、いつまで経っても切れる様子はない。
もう一度、フッっと息を短く吐き出して、電話を取る。
「…… もしも…… 」
「遅い、遅い、遅いっ!! 私からの電話は10秒以内に出なさいって、いつも言ってるでしょ?! 本当に愚図ね! 」
電話口から聞き慣れた声が、早口で高圧的に捲し立てる。
「…… お義母様…… 」
「で? どうなの? そろそろ孫の顔が見たいわ、私。 おめでたい報告はないのかしら? 」
ギクリッとし、クッっと息を呑む。
「…… ご希望に添えず申し訳ありません。 報告出来るような事は…… 」
そこまで口にして、ハッとする。