離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「そう言えば、蓮斗さんって何時に仕事終わるんだ?! 社長に退社時間なんてあるの? 」

 今夜、帰ったら聞いてみれば良いか。

 癖で、元々住んでいた部屋に戻って来てしまい、ついでに引越しの準備に荷物を纏める。

 蓮斗さんには、身体一つで来れば良い、と言われたので、身の回りの物だけキャリーバックに詰めて、タワーマンションに向かった。


「お帰りなさいませ、剣菱様」

 コンシェルジュに挨拶されて、誰もいない部屋に帰るのが普通だったので、不思議な気持ちになる。

 一人で住むには広ーーーい、4LDKの部屋に着き、全面ガラス張りのリビングで一息つくが、モデルルームの様で落ち着かない。

「探検でもするか…… 」

 一部屋目は、昨日、蓮斗さんがシャワーを浴びたゲストルームらしく、ソファベッドが置かれていた。

 二部屋目は、爽やかなブルーを基調としたカーテンに、ドーンッっと、キングサイズのベッドが置かれている。

「はわわわわわーーっ! こ、これは昨日、いたした現場…… 」
 
 ブワッと、羞恥心が湧き上がり、一人赤くなるが、口元は何故かニンマリと、緩んでしまう。

 三部屋目は、しっかりと鍵が掛けられていて開かない。

「ウーン……、ここは蓮斗さんのプライベートルームか…… 残念…… 」

 夫婦にもプライバシーは必要ね、とリビングに戻る。


「部屋にある物は。何でも使って良いって、言ってたけど…… 」

 キッチンに向かい、冷蔵庫を開ける。
 
「?!! 」

 酒、酒、酒、ワイン、そしてミネラルウォーター。

「蓮斗さんって、何食べてんの?! 」

 食材の買い出しにでも行くか、とロビーに下りて、コンシェルジュが、ニコリと微笑んだ。

「必要な物が有りましたら、お申し付けください」

「あ、そっか…… 」

 セレブってケータリングや外食か……

「…… なんて贅沢な…… 」

 スンッと、なりながら、マイバック片手に、私はスーパーへ向かった。





 






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