離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「ん、良い味! 」

 キッチンにジワッっと、食欲をそそる、ニンニクの良い香りが立ち込める。

 「季節の野菜のペペロンチーノの出来上がりーーーっ! 後は、スープとサラダを添えて、っと…… 」

 チラッと時計を確認すると、すでに21時を過ぎていた。

「蓮斗さん、すみません、先にちょっとだけ…… 」

 思ったより遅くなってしまったので、少な目の量を先に頂く。

 シャワーを浴びて、パジャマに着替えた頃には0時を回っていた。

「ほえーっ、社長ってこんな時間まで仕事するのね、大変…… 」

 私も少しだけ……、タブレットを開いて仕事の確認をしているうちに、ウトウトッと、眠りに落ちてしまった。



「ピピピ、ピピピ、ピピピーーーッ! 」

 携帯のアラームがけたたましく、鳴り響く。

「ウーン……ッ…… 」

 二度寝しようとして、ハッとして飛び起きる。

「嘘?! 朝?! やだ、私寝ちゃってたんだ! 」

 慌てて寝室に向かい、ガチャリとドアを開ける。

「…… あれ? 」

 蓮斗さんのプライベートルームに向かい、トントンッとノックするが、こちらからも返事はない。

「…… 居ないのかな? 」


 リビングに戻ると、キッチンは昨日作ったペペロンチーノが、手付かずのまま残っていた。

「えええー…… 結婚初っ端から、まさかの無断外泊?! 」

 携帯を確認するが、着信もメッセージもない。

「…… ウーン…… 。 セレブ婚って、自由を謳歌する人が多そうだもんね、こう言うものなのかな? 」

 (ホテルでも会えるし、仕事の事はそこで確認すれば良いか…… )


 なんて、軽く考えていたが、それから一週間、蓮斗さんは帰宅する事も、連絡をくれる事もなかった。








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