離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「シーちゃん、シーちゃん、大変!! 」

 昼休みに事務所でランチをしていると、チーフが、タブレットを片手に飛び込んで来た。

「どうしたんですか? 」


 みんなで、タブレットを覗く。

「数日前から、火山性地震や地殻変動が急増、余震を繰り返していた、海外の火山が先程、噴火しました‼︎  噴火の危険性を示す警戒レベルは現在は 「3」(入山規制)ですが、直ぐに「4」(高齢者等避難)、に引き上げられると見られます。 付近にお住まいの住民の皆さんは、充分に注意し、避難に備えて下さい。 繰り返します…… 」


「え?! 嘘?! この国って、マリーの……! 」

 身体中から血の気が引いて、指先が冷たくなるのを感じた。

 震える手で口元を押さえて、思考を巡らす。

(確か、蓮斗さんが、新しく、ホテル進出する事になったって言ってた筈…… )


「社長が帰れなかったのって、このせいだな、きっと」

 チーフが、私に呟いた。


(マリーは全国を、観光してから帰るって言ってたから、まだ日本にいる筈……、安全よね……。 蓮斗さんは大丈夫かな…… )


「あのやり手の社長の事だから、きっと大丈夫だ。 お前は、今出来る事をしっかりとやるしかないな」

 チーフに励まされ、私は、コクンッと頷いた。


 夕方、マリーからはメールを貰った。

「…… 良かった、やっぱりまだ日本にいたんだ」

 火山噴火には巻き込まれなかったが、マリーの父親の仕事柄、直ぐに帰国する事が余儀なくされた。

「気を付けてね」

 帰る前に、一目だけでも顔を見たかったが、緊急事態に近くの空港から、出国する為会う事は叶わなかった。

「…… 今は、顔見て話せる通信方法もあるし、連絡も直ぐ出来るから、大丈夫よね」

《See you later.》またね!

 私はマリーからのメッセージを、何度も読み返した。





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