離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「連絡しても良いかな…… 」
 
 マンションに帰宅したが、やっぱり蓮斗は居ない。

 流石に心配になり、携帯を握り締めた時だった。

 カチャッと、ドアが開く音がして、バタバタッと足音が響いた。

「シエナ! 」

 リビングに入って来た途端、ギュッっと逞しい腕に抱きしめられる。

「蓮斗さん! ニュースでマリーの国が大変だって…… 」

「ああ…… 、ずっとバタバタと対応に追われていて、連絡出来なくて、心配かけたな」

 コツンッと額を私にくっつけて、目を閉じると、蓮斗さんは苦しそうな声を絞り出した。

「地震の影響で、ホテル建設予定地も再調査が必要になった。 俺が行く。 ……すまない…… 噴火警戒レベルがどんどん上がっているからな、危険な所へ、シエナに一緒に来いとは言えない」

「…… 期間は…… どのくらい? 」

 額を離し、彼の顔を見上げる。

「早くて一年か…… 二年。 状況次第で早まる可能性もあるが…… 」

「延びる可能性も、あるのね…… 」

(本音を言えば着いて行きたい…… でも…… 行っても私に出来る事は身の回りの世話だけ。 知らない土地で、彼の帰ってくるのをモヤモヤしながら毎日待つなんて、私らしくない。 なら…… )

 額に皺を寄せ、

「ああ…… 」
 
 苦しそうに、小さく頷く。

 そんな蓮斗さんを真っ直ぐ見つめ、決意を告げる。

「…… 私もやりたい仕事があるの。 私にとって成長出来る、大きなチャンス。 だからここで、蓮斗さんが帰って来るのを、待っているわ。 でも、たまには…… 日本にも、帰って来てね、寂しい、から…… 」

 最後の方は、恥ずかしくなって、ゴニョゴニョと小さな声になってしまった。

「週に一度は帰ろう! 」

 無の顔で、冗談を言う蓮斗さんに、フッと頬が緩む。

「無理しないで。 帰って来れそうだったらで良いの。 そのかわり、時間がある時、メッセージをちょうだい、ね? 」

 このくらいの我儘、良いでしょう? っと、おねだりしてみる。

 グウッ……ッ

 蓮斗さんは、額に手を当てると、ほんのり頬を染めた。

「計算か……っ!? 」







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