離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 約束通り、蓮斗さんは時間がある時は、メッセージをくれた。

《今日は震度5の地震が3回あった。縦揺れで、かなり長い時間揺れていた 》

《火山灰が降り続いていて、休みだと言うのに、外に出れずに、ワインを一人飲んでいる 》

《マリーの家族と会った。 彼女の家は噴火地から離れているので被害はなく、とても元気そうだ。 シエナにも会いたいと、騒いているぞ 》

 多い日は、二、三回、連絡のない日もあったが、約束通り、月に一度は、日本に帰国した。


 日本に帰って来てからも、蓮斗さんは、社長だけあって、仕事が目白押しで目まぐるしく、一日が過ぎていく。

 当たり前だけどゆっくり二人で過ごす事も出来なくて、約束の指輪も、もちろん、結婚式もお預けだ。

「悪いな、シエナ」

 眼鏡の奥の瞳を曇らせて、謝る蓮斗さん。

「それよりも、帰国して、ほんの少しの時間でも、会える方が私は嬉しいな」

 寂しくないと言えば、嘘になる。

 (…… それは蓮斗さんも同じだと、思って良いよね? )

 マリーの国の火山噴火の被害は、思ったよりも酷く、ホテル建設を、一時断念するか、との話も出た。

 「いや、火山噴火があっても、あの国は、観光地だ。 火山さえも見に、観光客はやって来る。 収益を考えたら、引くのは間違いだ 」

 蓮斗さんの、社長自らの根強い調査や、収益計算を見越して、計画は継続された。

 

 


 

 




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