離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 病院にも行ったけど、私の方は異常なしの結果。

 蓮斗さんにも検査をして貰いたいけど、忙しい彼には、言い出せずにいる。
 
 とりあえず、タイミング療法からしてみますか? と、お医者さんには言われたけれど、排卵日に、蓮斗さんがいる事の方が少ない。

 なかなか難しい。

 蓮斗さんの事は、擬似遠距離恋愛の様で、いつも会えるのが楽しみだし、何気ない出来事に、ドキドキッさせられて、キュンッっとする。

「シエナ」

甘く艶やかな声で、囁かれるのも堪らない。

「会えない時間が愛を育てるって、本当だなぁ…… 」

 好きで、三年経った今では、もっと大好きだ。

 なのに……

 連日のお義母さんからの電話で、ストレスが半端ない。

 街や、ホテルでも、子供連れの人を見ると、羨ましくて仕方ない。

 月に一度の、蓮斗さんの帰国も待ち遠しいのに、いざ、抱かれても、妊娠しない後ろめたさからか、心から感じる事が出来ない。

 お義母さんから連絡が合った日は、特に重くモヤモヤとしたものが、心を埋め尽くし、悲しみに押しつぶされそうになる。

「…… 蓮斗さんも子供欲しいって言ってたな…… 」

 下腹がキュっとして、違和感を覚えた。

「あ…… 」

 慌ててトイレに駆け込む。

 自分から流れ出る赤い血を眺めて、私は呟いた。

「…… 今月も、妊娠してなかったな…… 」






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