離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます

　コンコンッ。

「シーちゃん？　入るよ」

「チーフ！　お客様は？！　」

　カダッと椅子を鳴らしながら、慌ててチーフに駆け寄る。

「機嫌を直してくれて、今、お見送りしたところ」

「……フォロー、 ありがとうございました…… 」

　頭を下げる私に、チーフ肩をポンッポンッと叩く。

「ミスは、誰にでもある。　だけど、起こるべきして起こるミスはダメだ。　わかるよな？　」

　チーフが上司の顔で、注意を促す。

「…… はい」


　蓮斗さんと白鳥さんの関係や、妊娠出来ないプレッシャー、お義母様から渡された離婚届、色々な事が、いつも頭の中にモヤモヤッと絡みついて、その事に意識を、持ってかれてかれてしまう。

　ここ数週間、直接聞くのが怖くて、蓮斗さんからの、メールも電話もずっと避けてしまっている。

　このままじゃいけないのは、わかっているのに、どうしたら良いのかわからない。


「…… 最近、ずっと上の空だし、ミスも多い。　このままじゃ安心して仕事回せなくなるぞ」

　チーフからの指摘に、ギュッッと唇を噛む。