離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「…… チーフ、今夜時間ありますか? 相談したい事が…… 」
ん? っと顎に片手を当てて、チーフは少し考えてから、徐に口を開いた。
「…… それって、本当に俺に話していい相談? まず先に、言わなきゃいけない相手って、俺じゃ無いだろ? 甘やかしてやりたいけど、敢えて言うぞ? …… 甘えんな! 」
チーフの言葉に、ハッとして、自分の狡さに恥ずかしくなる。
「あ…… そう…… です、よね」
チーフはフッと、小さく息を吐き出して、私を真っ直ぐに見つめる。
「俺の所に来る覚悟があるなら、いくらでも聞いて、お前の望む言葉を言ってやる。 …… だけど…… そうじゃないんだろ? 」
声色は優しいけど、チーフの声は少し震えていた。
「……はい…… 失礼な事言って…… すみません…… ! 」
クッっと歯を食い縛り、泣きそうになるのを必死で堪える。
(…… 私はなんて酷い事を…… チーフの私を想ってくれる好意を利用して、自分が辛いからって、蓮斗さんとの……、夫婦の悩みを相談しようとするなんて……! 無神経にも程がある…… )
俯いて、自省する私に、ハァーッと一回息を吐き出す音が、聞こえた。
「と、は、言っても、俺がほっとけないからな、上司としてなら、一緒に飯くらいは食ってやる。 但し、昼な。 人妻は、夜、他の男と過ごすのはNGだろうからな」
眉をハの字にして、チーフは頬を緩ませた。
「本当は、弱ってる今、つけ込みたいけど…… 」
最後の方は小さな声で、ブツブツ呟いたので、聞き取れなかった。
結局、チーフは私を甘やかしてくれる、良い上司、もとい、ほんとに良い男だと思う。
「……もちろん、チーフの驕りです、よね? 」
顔を上げて、ニヤリッと笑う私に、チーフもブハッと、吹き出した。
「千円までな! 」