離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 私と蓮斗さんが出会ったのは四年前。

 蓮斗さんの実家、剣菱グループのブライダル部門の、ヘアメイクアップアーティストとして、私は働いていた。
 

「次は14時から着付け二組か…… 。 この間にお昼行っちゃおう」

 携帯で時間を確認すると、11時30分を回った頃だった。

 少し早いけど、軽く摘もうとホテルのラウンジに向う途中、ロビーの片隅で、着物を着て泣いている女の子が目に留まった。


「ウッ…… ウウッ……ッ グスンッ、グスンッ」

 アッシュブブロンドの髪をして、青い目の着物を着た女の子で、大粒の涙をポロポロと溢している。


「どうしたの? 迷子かな? 」

 よく見ると、髪は乱れて、着物も着崩れていた。

(七五三かな……? )


「I slipped and fell.」

 エグエグッと泣きながら、小さく呟く女の子。

「fell…… 転んじゃったのか。大丈夫だよ。 あ、えーと…… Don't worry, it's okay.」

 私は目線を合わせて、安心させる様に笑う。

 
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