離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
「良かった! 居た!! 」

「何かあったんですか? 」

 慌てているチーフに、首を傾げて尋ねると、

「13時の予約のお客様が、早めに着いたから、繰り上げて打ち合わせして欲しいっておしゃってて。 ちょっと癖のあるお客様だから…… 」

 確か、打ち合わせ直後に、直ぐに変更を申し入れたり、対応にクレームをつけたりと、手を焼くお客様だったな…… と、頭の中から情報を捻り出す。

「わかりました。 直ぐに行きます」

「…… 良いのか…… ? 」

 チーフはチラッと、蓮斗さんの方を伺う。

 私は、コクリッと頷いて、

「ごめんなさい、緊急事態なので、行きますね」

「あ、ああ…… 」

 仕事の事となると、そこは社長なだけあって、蓮斗さんは、小さく頷いて、私を引き留めることはしなかった。

「すみません、社長、失礼します」

 チーフは一度振り返って、ペコリと蓮斗さんに頭を下げた。

 私は、気付かれない様に、小さく、ハァーッと息を吐いた。

(ダメだ…… やっぱり顔を見ちゃうと、実感しちゃう…… 私、まだ、こんなに好きじゃん、蓮斗さんの事)

 心臓が早鐘を打ち、少し火照った頬をそっと撫でた。
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