離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます

 蓮斗さんの手が伸びて来て、私の頬に手を当てると、親指で唇をツーっとなぞる。

 キスをしようと、顔を近づけた蓮斗さんは、私の様子に、ハッすると、額に皺を寄せて躊躇する。

 生理的な涙なのか、この感情の篭っていない、冷え切った夫婦生活を嘆いてなのか、瞳からポロッと一筋涙が溢れた。

「……っ! ……そんなに嫌、なのか…… 」

 彼は片眉を上げ小さく呟くと、ハッと苦笑を漏らした。

「……ちがっ……! 」

 誤解されたくなくて、思わず叫んだが、涙はポロポロッと、次から次に溢れ落ちる。

 怒りと苛立ちからか、少し乱暴に腰を掴むと、蓮斗さんは何度も奥へ進む。

「んくっ…… 」

 身体の痛みも、心の痛みもごちゃ混ぜになっているのに、一つだけハッキリと、気付いてしまった。
 

(愛を深めるための触れ合いなのに…… いつから、こんな冷え切り、義務的な行為に、なってしまったんだろう…… )

 胸がキシキシッと痛んで、また涙が溢れてくる。

(好きだから…… 、蓮斗さんの幸せが一番だから…… )

 今日でこの想いとは、決別しなくちゃいけない。 


(まだ、こんなに愛しているのに…… だから…… )
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