「今日、クリスマスってよ」

走って走って、やっと正門が見えてきたことにほっとして。

息は苦しいし、足がもつれそうになりながらも、なんとかそこまで辿り着く。


……これだけ走れば大丈夫だよね?


あの2人が見える範囲には居たくない。

瀬尾の視界から消えてしまいたかった。


壁に寄りかかって少しだけ立ち止まる。

吐く息は荒いし、久しぶりに走ったせいで足は重い。


「はぁー……」

深く履いた息は白いモヤとなって消えていった。


……早く帰らなきゃ。

そう思って一歩踏み出した時だった。


「水原!」


遠くから叫ぶ声。
走りながら近づいて来る足音。


嘘。
だって、そんなわけない。


信じられない気持ちとは裏腹に、聞こえてくるのは紛れもなく瀬尾の声で。


追いかけてきたの? なんで?

ゆうか先輩はどうしたの? 一緒にいるの?

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