「今日、クリスマスってよ」

な、なにが起きてるの?


一瞬フリーズするも、耳にかかる吐息が、響く声が、背中越しに伝わる胸を上下する動きが。


その全てが、瀬尾と密着しているという事実を明確に物語ってきて。


「……は、」
「水原?」
「離して……」

あぁもう……。
なんで私ってこんなに可愛くないんだろう。

なんで素直にお礼ひとつ言えないんだろう。


「あ、わり」

瀬尾が離れたことで支えていた腕がなくなり、へなへなとその場にうずくまってしまう。


もう何もかもが嫌だ。

自分の嫌なところしか見えないのが嫌。

可愛くないところが嫌。

瀬尾に彼女がいるのも嫌で、そんなことを思ってしまう自分が嫌で嫌で。


「水原!? 大丈夫か!?」


こんな私でも、心配してくれる瀬尾はすごく優しい。

でも、その優しさが向けられるのは私だけじゃなくて。

きっと、瀬尾にとっては当たり前のこと。

目の前で急に座りこまれたら、普通に心配するし、声もかける。


……でもその当たり前の優しさが、私にとってはものすごく嬉しいの。

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