「今日、クリスマスってよ」

そんな瀬尾だから好きになった。

だから瀬尾の好きな人が私じゃないことが、わかっていてもすごく悲しいんだ。


全部、私の自分勝手な感情だ。


「なぁ、まじで大丈夫か? 具合悪い?」


瀬尾の声の優しさに、じわりと視界がぼやける。


大丈夫だよって。
だから心配なんてしなくていいんだよって。

そう声に出せば良いのに、口を開けば溢れてくるのは涙だけで。


やっとのことで出来たのは、首を横に振ることだけだった。


そんな私に呆れるどころか、背中をさすってまでくれる瀬尾に、びくりと身体が震える。

きっと瀬尾にとってはなんでもないその行動に、変に大袈裟な反応をしてしまったと後悔するも、その手は止まらなかった。


こういうところに、また好きになってしまうんだ。

その気持ちは、自分の首を絞めるだけだとわかっているのに。


……瀬尾のバカ。

彼女がいるんだったら、こういうことしないでよ……。

< 13 / 62 >

この作品をシェア

pagetop