「今日、クリスマスってよ」
「それよりも」
鼻をかんでいると、いつのまにか立ち上がっていた瀬尾と向き合う佑香先輩。
「拓真、あんた女の子泣かせてんじゃないわよ」
……え、そこ?
てっきり修羅場になると思っていただけに、先輩の指摘は拍子抜けで。
「……うるせー」
瀬尾は瀬尾でブスッとしたまま、弁解するどころか悪態までついているし。
えっ、そんな感じなんだ。
恋人同士の甘々な雰囲気はそこには微塵も存在せず、でも悪態の裏に隠しきれない仲の良さが滲み出ている。
「えーっと、水原さん?だっけ?」
「あ、はい」
もう一度こちらを振り向いた先輩。
何言われるんだろう……。
無意識に身体に力が入る。
「こんな不出来な弟で申し訳ないけど、よろしくね」