「今日、クリスマスってよ」

えっ、なに。


「水原」


みるみると近づいてくる顔。

え、えっ、本当になに?
ちょっとまって。心の準備が……!


「ここ、間違えてんじゃん」


なにを期待してか、きゅっと瞑った瞳。

にも関わらず予想外の指摘にぱっと目を開けば、瀬尾の視線はとっくに逸らされていて。


その外された視線の先を辿れば、瀬尾の指がプリントの1箇所を指していた。


「あ、ほんとだ」

確かに計算ミスしてる。


……ていうか。

すごいびっくりした。

だって目があったまま、近づいてくるから。


「キス」

隣でぽつりと落とされた言葉。
ばっと視線が瀬尾へと移る。


「されるかと思った?」

にやりと笑うその顔に、かっと熱が上る。

「知らない!」

そう吐き捨てて、もう一度課題へと視線を戻す。


バクバクとなる心臓は、未だに鳴り止まない。

……それどころか、むしろ大きくなった気がする。

< 2 / 62 >

この作品をシェア

pagetop