「今日、クリスマスってよ」

「なぁ」


瀬尾の顔が見れない。


「私、」
「水原?」
「私、帰るね!?」


いてもたってもいられず、話しかけたきた瀬尾のことも無視してその場から逃げ出そうとする。


多分、穴があったら入りたいってこういう気持ちなんだ……!

すごい恥ずかしい……!


「水原!?」


でも私の3度目の逃亡は達成されることはなかった。

がしっと力強く掴まれた腕。

え、なに。

戸惑う暇も与えないまま、腕を引かれた勢いでぽすんと瀬尾の身体に収まってしまう。


肩から滑り落ちた鞄が、足元でどさりと音を立てた。


え、ちょ、まって。
な、なに?
なにが起こったの?


捕まってしまったこと、瀬尾が私を捕まえたこと、腕を引かれたこと、全てがわけわかんなくて頭がぐるぐるする。


それなのに、ぴったりとくっついた背中から伝わる熱は、まるでさっきと同じで。

< 20 / 62 >

この作品をシェア

pagetop