「今日、クリスマスってよ」

だ、抱きしめられてる……!?


ぼぼぼぼっと一気に顔に熱が上る。


恥ずかしくて瀬尾から離れたいのに。

回された腕がぎゅっと力を込めるせいで、離れたいのに離れられない。

…………離れたくない。


この状態がずっとこのまま続けば良いのに……。



ちらちらと降っていた雪はいつのまにか止んだみたいで、空には厚い雲だけが広がっている。


「好き」


…………すき?

聞こえた声は、間違いなく瀬尾のものだった。


いつもと同じ低い声なのに、どこか熱を帯びたような甘さを感じるのは、言葉の意味を図り損ねている私の勘違いかもしれない。


好き?
今好きって言った、よね?
聞き間違いじゃないよね?


寒いのにじわじわと顔が火照りだす。


え、好きってそういう好き?
いや、そういう好き以外にどういう好きがあるかって言われたらわかんないし。
いやいやでも何が好きとは言ってないから!


だから、勘違いするな、私。


期待に高鳴る心臓は見ないフリ。
さっきの瀬尾の言葉も聞こえないフリ。

そうしてなんとかやり過ごそうとしてるのに。


「好きだ」

もう一度同じ言葉を言われてしまえば、もう無視することなんてできなかった。

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