「今日、クリスマスってよ」
「な、なにが好きなの?」
恐怖に、期待に、声が震える。
私は臆病で、瀬尾の言葉にまっすぐ向き合うこともできない。
時間にすればほんの数秒。
流れた沈黙に身動き一つ取れなかった私の身体から、ふと拘束の力が緩められた。
「わっ」
気づけば向き合う形になっていて、やけに真剣な目をした瀬尾がまるで捉えて離さないとばかりにこちらを見ていた。
「水原以外にないだろ」
「……うそ」
「嘘じゃねぇ」
「水原が好きだ」
瀬尾の真っ直ぐな瞳が私を貫く。
でも次の瞬間には、なんだか困ったような、ふにゃっとした優しい笑みを浮かべていて。
「水原のこと泣かせちまうし、ガキみてぇだし、こんなどうしようもない俺だけど、水原を思う気持ちは誰よりも負けねぇ自信がある。だから、っ……!?」
ぎゅうっ。
瀬尾がまだ話してる途中なのに、気づけば抱きついてしまっていた。