「今日、クリスマスってよ」
瀬尾拓真
「今日クリスマスってよ」
窓の外をちらっと見れば、雪が降っていた。
窓とは逆の隣に目を移せば、そこには必死に課題を解いている水原の姿。
「知ってる」
こちらを見もせずに返ってきたそっけない言葉に、「ま、そんなもんだよな」という感想が浮かんでくる。
でもそれと納得するかは別の話。
「じゃあなんで俺らは補習してるんですかね」
どうでもいいような会話をさっきから投げかけてるのは、好きな子にこっちを向いて欲しいというガキみたいな我儘。
「バカだからじゃないですかね」
でもやっぱり水原の視線はプリントに固定されたままで。
その横顔も可愛いなんて思ってしまうのは、もうどうしようもない。
「あー……。今日、クリスマスってよ」
補習と言えど、クリスマスに好きな子と2人っきり。
これで喜ばない男がいるだろうか。
……少なくとも俺は嬉しい。