「今日、クリスマスってよ」
「拓真!」
あぁ、なんてタイミングなんだろう。
昇降口へとたどり着いた私たちを待っていたのは、瀬尾を呼ぶ声。
瀬尾に手を振るその人は、リボンの色からして多分1つ上の先輩で。
モデルみたいな身長にスラっとしたスタイル、栗色のショートカットの髪がこの上なく似合ってる。
そんな美人さんが、ぐるりと巻いたマフラーに顔を埋めて、寒そうにして待っていた。
「佑香!?」
隣の瀬尾が驚いたように、その美人な先輩の名前を呼ぶ。
それだけで、わかってしまった。
「ぁ……、私帰るね!」
靴を履くのもそこそこに脱兎の如く駆け出す。
美人な先輩にぺこりと一礼して横を通り過ぎれば、ふわりと甘い匂いが鼻をかすめた。
「あ、水原!」
後ろで瀬尾が呼ぶ声が聞こえたけど、止まることなく走る。止まれるわけがない。
"ゆうか"
そう呼んだ瀬尾の声が頭から離れない。
そっか。さっきの美人な先輩は、ゆうか先輩って言うんだ。
──ゆうか先輩が、瀬尾の彼女なんだ。