記憶のカケラを拾って
〈愁side〉
2度と離さない。そう決めたのに、音は俺から離れていった。他の女を俺に押し付けて。

「じゃあ、私行くね」

そういって歩いていく音の後ろ姿が小さくて愛しくて、追いかけて抱きしめたいと強く思った。でも、もうそれは俺はできない。

「ねぇ、どうすんの。」

隣から聞こえた。

「俺はお前と付き合うつもりないから。」

「…っ!音に言われたなら私と付き合うと思ってた」

「ふっ、なんだそれ。俺は好きになったやつとしか…音としか付き合うつもりはない。」

「でも、これで私たちが悪い仲ならきっと音は幸せじゃないと思う。」

「なにが言いたいんだよ」

「音は今、必死で私たちの幸せを祈って応援してくれてる。それをあんたは裏切るの?好きなんでしょ?音のこと。」

「それはお前が俺と付き合う言い訳でしかないじゃん」

「だって私にとってはチャンスなんだよ!?しかもそのチャンスをくれたのは音だよ?そんなの両方無駄にしたくない!」

「お前はさ、どうして自分のことしか考えられないの?」

「ちゃんと音のことも考えてる!だから音のためにも愁くんと付き合おうって思ってるじゃん!!」

こいつの言ってることは全部こいつのためにしか聞こえないし。それにやっぱりおれは…。

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