ねぇ待ってそれ聞いてないっ!



なんたって私は傷心中の身なんだもん。


好きな人に好きな人がいて、それを察知できなかった自分の鈍感さ。


好きな人に好きな人がいるという事実を私じゃない誰かが先に知ったという私の出遅れ感。


それはそれはもう、物凄いショックを受けたんだよ……!


今はまさに、傷口にぐりぐりと岩塩をねじ込まれている気分で。


コウくんの性悪!鬼!わからずや!!


「今、心の中で悪口を言ってるでしょ」

「なんでわかったの!?」

「あかりのことならなんでもわかる」

「へぇー、さすがコウくんだねぇ……」

「褒めても貶した罪は消えない」


びよーんと、私のほっぺが餅みたいに横に伸ばされる。


心なしか楽しそうだから、私はされるがままでコウくんを簡単に許しちゃうんだ。


……って、あれ。


よく考えると、コウくんは毒を吐いていること以外はまったく悪くないね?


私が勝手に一人で落ち込んで、勝手に逆恨みをしているだけだ!やっちまった!!


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