片想い婚
「山下さんはどうだった?」
「あ、なんかあったらいつでも頼ってって、電話番号教えてもらいました」
「そうか、よかった。あの人は昔からうちに来てて、僕も散々お世話になってる家政婦さんだけど、気が良くていい人だからね」
「はい、わからないこととか山下さんに聞こうと思います」
「それがいいね」
優しく笑ってくれる蒼一さんに笑い返す。彼はそのまま食事を続けた。みるみるおかずたちは減っていき、全てが彼の胃袋へと収まる。
きんぴらごぼうが入っていた小皿も、綺麗になっていた。
それをチラリと眺め、ほっと息をつく。
「ごちそうさまでした」
「あ! お皿は洗います、それくらいさせてください」
「ほんと? じゃあ甘えて、僕はお風呂に行ってこようかな」
蒼一さんはそう言ってリビングから出て行った。残された食器たちを片付けながら、私は一人頬を緩めた。
山下さんに教わりながら、私が唯一作った料理はきんぴらごぼうだった。
ちょっと形とか歪だったけど、蒼一さんは完食してくれた。多分、美味しくできていたんだな。
今まで知らなかった。大切な人に作った料理を完食されることが、こんなに嬉しいことだなんて。
嬉しさに笑い、部屋の隅にしまっておいたノートを取り出す。今日教わったレシピがそこには書かれていた。
少しずつ。少しずつでいいから頑張ろう。まだ私自身奥さんと呼ばれるにはあまりに不出来。これから頑張って立派な女性になろう。
そしていつか、蒼一さんがお姉ちゃんを忘れてくれる日を待って。
私はノートを仕舞い込むと、からになったお皿たちを洗うために腕まくりをした。
「あ、なんかあったらいつでも頼ってって、電話番号教えてもらいました」
「そうか、よかった。あの人は昔からうちに来てて、僕も散々お世話になってる家政婦さんだけど、気が良くていい人だからね」
「はい、わからないこととか山下さんに聞こうと思います」
「それがいいね」
優しく笑ってくれる蒼一さんに笑い返す。彼はそのまま食事を続けた。みるみるおかずたちは減っていき、全てが彼の胃袋へと収まる。
きんぴらごぼうが入っていた小皿も、綺麗になっていた。
それをチラリと眺め、ほっと息をつく。
「ごちそうさまでした」
「あ! お皿は洗います、それくらいさせてください」
「ほんと? じゃあ甘えて、僕はお風呂に行ってこようかな」
蒼一さんはそう言ってリビングから出て行った。残された食器たちを片付けながら、私は一人頬を緩めた。
山下さんに教わりながら、私が唯一作った料理はきんぴらごぼうだった。
ちょっと形とか歪だったけど、蒼一さんは完食してくれた。多分、美味しくできていたんだな。
今まで知らなかった。大切な人に作った料理を完食されることが、こんなに嬉しいことだなんて。
嬉しさに笑い、部屋の隅にしまっておいたノートを取り出す。今日教わったレシピがそこには書かれていた。
少しずつ。少しずつでいいから頑張ろう。まだ私自身奥さんと呼ばれるにはあまりに不出来。これから頑張って立派な女性になろう。
そしていつか、蒼一さんがお姉ちゃんを忘れてくれる日を待って。
私はノートを仕舞い込むと、からになったお皿たちを洗うために腕まくりをした。