片想い婚
頭がくらくらした。だが、今こんなことをしている場合ではない。私は振り返り、咲良の元へ行こうと足を踏み出す。
「どこへ行くんです」
「黙っててください、咲良のところへ帰ります」
「なぜ? あの子は離婚に同意してますよ」
「同意したんじゃない! 同意させたんだ!」
「蒼一」
母が自分の名前を呼ぶのを無視した時、部屋に大きなインターホンの音が鳴り響いた。その音を聞いて、もしや咲良か、と反応する。離婚を思いとどまってくれたのかもしれない。
慌てて玄関へ向かった。靴さえも履く余裕がなく、そのまま足を下ろす。鍵を開けて、勢いよくそのドアを開けた。
だが扉の向こうにいたのは望んだ人ではなかった。見慣れた新田茉莉子の顔があってぽかん、としてしまう。彼女はにっこり笑って私に頭を下げた。
「お邪魔します」
「え? いや、どうして新田さん」
訳がわからずそう呟いた私の背後で母が笑った。
「あら、早かったわね」
「ふふ、実は近くまで来てたんです。天海さんが午後のお仕事をお休みしているのを見て、こちらに来るんじゃないかと」
「さすがね。上がって」
私を差し置いて二人盛り上がりながらリビングへ入っていく。このまま咲良の元へ帰ろうかと思ったが、あの二人が繋がっていることはどうも胸をさわがせた。私は再びリビングへ戻る。
和気藹々とソファに腰掛け話している女二人を少し離れたところから呆然と眺めていると、母が言った。
「蒼一。
次の結婚相手にはこの人がいいと思っているの」
「はあ?」
自分の口からそんな声が漏れる。一体何を言っているんだと思った。母は続ける。
「どこへ行くんです」
「黙っててください、咲良のところへ帰ります」
「なぜ? あの子は離婚に同意してますよ」
「同意したんじゃない! 同意させたんだ!」
「蒼一」
母が自分の名前を呼ぶのを無視した時、部屋に大きなインターホンの音が鳴り響いた。その音を聞いて、もしや咲良か、と反応する。離婚を思いとどまってくれたのかもしれない。
慌てて玄関へ向かった。靴さえも履く余裕がなく、そのまま足を下ろす。鍵を開けて、勢いよくそのドアを開けた。
だが扉の向こうにいたのは望んだ人ではなかった。見慣れた新田茉莉子の顔があってぽかん、としてしまう。彼女はにっこり笑って私に頭を下げた。
「お邪魔します」
「え? いや、どうして新田さん」
訳がわからずそう呟いた私の背後で母が笑った。
「あら、早かったわね」
「ふふ、実は近くまで来てたんです。天海さんが午後のお仕事をお休みしているのを見て、こちらに来るんじゃないかと」
「さすがね。上がって」
私を差し置いて二人盛り上がりながらリビングへ入っていく。このまま咲良の元へ帰ろうかと思ったが、あの二人が繋がっていることはどうも胸をさわがせた。私は再びリビングへ戻る。
和気藹々とソファに腰掛け話している女二人を少し離れたところから呆然と眺めていると、母が言った。
「蒼一。
次の結婚相手にはこの人がいいと思っているの」
「はあ?」
自分の口からそんな声が漏れる。一体何を言っているんだと思った。母は続ける。