わたしのカレが愛するもの


中学生、高校生、そして大学生になり、大人になってからも。
わたしの頭の中には「もしもコウくんと恋人同士だったなら」というシチュエーションで思い描いた夢が、パンパンに詰まっていた。

そしていま現在、その夢は「唇にキスをする」というもの以外、ひとつも叶っていない。

お弁当を持って、桜を見に公園へピクニックへ行く、とか。
浴衣を着て、夏の花火大会を見物に行く、とか。
紅葉のきれいな山奥の温泉宿に泊まってまったりする、とか。
クリスマスに、一緒にイルミネーションを見て、ステキなレストランで食事をし、プレゼントを交換する、とか。
バレンタインデーに、手作りチョコをあげる、とか。
ホワイトデーのお返しに、テーマパークに連れて行ってもらう、とか。

行動としては、叶っている。
わたしたちの仲睦まじさを知っている友人知人は、「それで付き合ってないっておかしくない?」と口を揃え、首を傾げる。

が、「恋人同士として」ではなく、あくまで「幼馴染として」のデート。
楽しかったし、嬉しかったし、いい思い出ではあるものの、「甘くロマンチックな思い出」ではない。


(だから、まずは「クリスマス」から制覇しなくちゃ!)


冬の一大イベント。
クリスマスは、街の様子からして、否が応でもロマンチックな雰囲気が高まる。
ちょっと特別なことをしても、違和感がない。

長年の夢(野望ともいう)を叶えるのに、絶好のチャンスだ。

コウくんが海外にいる間、フィールドワークで海の上にいることが多く、彼を捕まえるのは至難の業だった。
しかし、いまはちがう。
もちろん海に出ることもあるけれど、陸にいることの方が多いし、電話もつながる。
事前に予定を合わせて、おしゃれなレストランでディナーを食べ、ホテルのスイートルームで、スイートな一夜を過ごす……なんてことも、不可能ではない。

食べ終えたお皿を片付け、一応恋人同士らしく並んでソファーに座り、熱帯魚たちを眺めながら切り出す。


「ねえ、コウくん。今年のクリスマス、予定はある?」


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