わたしのカレが愛するもの
男性陣は『コウにはもったいない!』とか『うらやましすぎる』なんて単純な感想を漏らし、女性陣は含みのある感想を述べる。
『彼女、キレイだものね。容姿を生かす仕事をするのが理にかなってるわ』
『あー、うらやましい。わたしも、何もせずともちやほやされる美人に生まれたかったわぁ。人生楽しそう』
言葉面だけを捉えれば、失礼なことは何一つ言っていない。
しかし、彼女たちの口調、声音には棘があるし、そのまなざしは明らかにこちらを「見下して」いる。
そもそも、わたしが彼女たちの会話を理解できるはずがないと思っているのが、何よりの証拠だ。
けれど、そういう女同士なら敏感に察知するサインも、どういうわけか男性にはわからないものらしい。コウくんは、彼女たちの神経を余計に逆なでするようなことを平気で言う。
『うん。ちぃは、子どもの頃から可愛かったんだよ? 初めて会ったとき、天使かと思ってびっくりしたくらい。いまは、天使というより女神だけどね』
『女神ねぇ……』
『女神、というより女王さまじゃないの?』
『うん、そうかも。ちぃのお願いは断れないから。何だって叶えてあげたくなる』
『やめろよ、コウ! フィアンセどころか恋人すらいない俺を落ち込ませる気か?』
『俺がフラれたばっかりなの知ってんだろぉっ!?』
際限なくノロケそうなコウくんを男性たちが冗談めかしてたしなめる。
『ゴメン、ゴメン。そんなつもりはなかったんだけど。幸せすぎて』
『くっそー! おまえにサンタクロースは来ないからなっ!』
わいわいと言い合う彼らをそのままに、コウくんはわたしをソファーに座らせると、「ちぃ、何が食べたい? ピザ食べる?」「飲み物は? シャンパンは空けちゃってるんだけど、ビールでもいい?」などと、甲斐甲斐しくお世話してくれる。
そんなコウくんに、エルサたちは猛抗議だ。
『わたしたちには、そんなことしてくれないじゃない!』
『真っ先に、自分の分のピザを確保するくせに!』
『二人は同僚で友人。ちぃとはちがうし、ちぃよりも遥かにたくましいから。放って置いても大丈夫だろ?』