わたしのカレが愛するもの
危うくオリーブを吐き出しそうになり、何とか呑み込んだ。
「え、あの、」
「俺に日本のことをいろいろ教えてほしいんだ。その代わり、千陽ちゃんには恋人気分を楽しんでもらえるように、完璧な恋人役を演じてみせるからさ」
「でも、あの、」
「大人の女の魅力を身につけて、幸生を誘惑したいんでしょ?」
わたしの頭の中の妄想を取りまとめて要約すれば……。
つまり、そういうことだ。
「……うん」
「俺だったら、いまのままの千陽ちゃんでも十分そそられるんだけどな。何もしないなんてあり得ない」
リップサービス、しかも大出血サービスを披露した昴くんの纏う雰囲気が、ガラリと変わる。
じっとわたしを見つめるまなざしは熱く、密着しているわけでもないのに、どういうわけか吐息交じりのその声が耳元で聞こえた。
「いまだって……キスしたくてしかたない」
伸びて来た手が、わたしの首筋に触れ、後頭部へと回る。
何が起きているのか理解しようとしても、いま頃回った酔いのせいで、頭がちゃんと働いてくれない。
ぎこちなさも気まずさもない、流れるような自然な動作でキスに及ぼうとする昴くんをぼーっと見つめながら、わたしもこの技を会得できないだろうか……なんて考えていたら、誰かの手で口を塞がれた。
「んーっ!?」