わたしのカレが愛するもの
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梨々花とジョージさん、昴くんの三人は、もうちょっと静かなところで飲み直したいと言って、わたしたちと一緒に店を出た。
五人でエレベーターに乗り込むなり、ニヤニヤ笑いっぱなしの梨々花に、声を潜めているつもりだろうけれど、ぜんぜん潜められていない大声で激励される。
「千陽のコウくん、めちゃくちゃイケメンじゃない! ほかの男に目移りしない理由がよくわかったわ。コウくんも、千陽のことめちゃくちゃ好きみたいだし! いい? 性悪女になんか負けちゃダメだからね! 頑張りな!」
「うん、がんばる……」
「はぁ、やっぱり恋っていいわねぇ。キラキラ、内側から輝いているものねぇ……」
ジョージさんは、スケルトンのエレベーターの外、街路樹を飾るイルミネーションを見下ろし、「わたしも、諦めずに運命の相手をもう一度探そうかしら」なんて乙女なことを呟いたが、ふとわたしを振り返った。
「千陽。偲月には、朔哉を泥酔させて寝かしつけるよう言っておくわね? 朔哉、いつも千陽が帰って来るまで、起きて待っているんでしょ?」
「あ、はい……」
(そ、そうだった。パパのことも、門限も、すっかり忘れてた……)
「それから、ロマンチックな気分になって、盛り上がる気持ちはよぅくわかるけど、計画通りに結婚式したいなら、避妊はちゃんとしなさいね? 千陽が妊娠したなんて聞かされたら、朔哉がそれこそ錯乱して、結婚式を妨害するかもしれないから!」
「……は、はい。(そういう展開になる可能性は限りなく低いけれども)留意します」
「ところで、千陽。まさか、今日の下着はエンゼルフィッシュ柄じゃないわよね?」
「…………」
梨々花の思わぬツッコミに対し、咄嗟にごまかせず口ごもると驚愕の表情を返された。
「やだ、ちょっと、アンタねぇ……何年前のもの着てるのよっ!? ヨレヨレのびのびじゃないのっ!?」