わたしのカレが愛するもの
「ジャックローズくださーい! で、コウくんはどうしたのよ? 浮気?」
カウンターの向こうにいるバーテンダーにオーダーを叫んだ梨々花は、いつもの彼女らしくズケズケと踏み込んでくる。
「ちがうっ!」
「じゃあ、仕事?」
「……そんな、ような」
「じゃあ、しかたないじゃない」
「そう、だけど」
「はっきりしないなぁ……で、コウくんはいまどこにいるのよ?」
「わからない」
「わからない?」
「日本のどこかにはいると思う」
「日本のどこかって……」
「この前連絡が来たときは、小笠原諸島にいるって言ってたけど。屋久島にも行くって言ってたし、沖縄の水族館も見学するって言ってたし……」
このひと月、コウくんは日本中を飛び回っていた。
「は? 何でそんなことになってるのよ?」
「それは……」
話は、一か月前までさかのぼる。