わたしのカレが愛するもの
第x章
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のんびりイチャイチャ。
ベッドからなかなか出られない日々を三日ほど送った後。
今朝は六時に起床、出かける準備を整えた。
新年まであと三日と迫る中、日本を発つエルサたち四人を見送りに行くためだ。
「ちぃが気を遣うことなんかないんだよ? 見送りなんて行かなくてもいいのに」
コウくんはそう言ってくれたが、わたしが行きたいと言い張った。
クリスマスイブ、コウくんがわたしのところへ何とか帰って来られたのは、彼らのおかげ。
わたしと連絡が着かないと焦るコウくんを見て、クリスマスは大事なひとと過ごすべきだと言って、予定を変更してこちらへ戻って来てくれたのだ。
その気遣いに、感謝の言葉を伝えたかったし、エルサともう一度話したかった。
このまま、エルサとの決着をつけないままに別れたら、いつまでも引きずってしまいそうだった。
コウくんが、浮気をするなんてちっとも思っていない。
けれど、もともと優しく、公平なコウくんのことだから、元同僚で友人であるエルサを冷たくあしらうなんて、できないだろう。
だったら、わたしが悪役になればいい。
コウくんは、エルサに好意を抱かれていると感じてはいたけれど、婚約を報告しても、何も言われなかったと言っていた。
たぶん彼女は、諦めるつもりだったのだろう。
それが、いざ日本に来てみれば、コウくんの婚約者であるわたしは、彼女たちがコウくんに相応しいと考えている女性像とはかけ離れていた。
しかも、悪意ある言葉一つで簡単に揺らぐほど弱い。
それが、もしかしたら、わたしとコウくんの間には、彼女が入り込める隙がある。そう思わせたのかもしれなかった。
彼女のことは、好きになれそうにない。
でも、嫌いになることもできそうにない。
だって、同じ人を好きになったのだから、わたしたちにはきっとどこか似通った部分がある。