わたしのカレが愛するもの
『……?』
何か用か、と敵意むき出しの視線を返す彼女に、満面の笑みを向けた。
『コウくんは、わたしが幸せにするから、あなたはどうぞ安心して国へ帰って?』
『……ヤな女』
『あなたもね』
『コウは、女を見る目がないのよ。元カノにも、浮気されてフラれたし』
『わたしは浮気なんてしないわ』
『どうかしらね。あなたも彼女も、コウの一番になれないってことでは、一緒よ』
『そうね。コウくんを夢中にさせるのは、わたしじゃなく魚だものね。でも、魚類と張り合うつもりはないの。彼らは海で、わたしは陸で、コウくんを幸せにすればいいだけだから。そもそも、魚類とは愛し合えないでしょ?』
『……フン』
つまらなさそうに鼻を鳴らしたエルサは、リックたちが保安検査場へ向かって歩き出すのを追いかけようとして、ちらりとわたしを振り返った。
『最後のイヤガラセ。コウの元カノの写真、送っておいたわ。彼、すごくいいカオで写ってるの。今日あたり、届くはずよ』
『…………』
わたしがむっとするのを見て、ニヤリと笑ったエルサは『お幸せに』と呟き、去って行った。