わたしのカレが愛するもの
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空港をあとにして、賑わう市場を覗き、ラーメンを食べ、コウくんのマンションへ帰りついたのは日暮間近。
ポストには、エルサが言った通りに最後のイヤガラセが届いていた。
「俺宛て……だけど、中身はちぃ宛てだね?」
封筒の中には、さらに封筒が入っていて、そこにわたしの名前が書かれていた。
「誰からだろう?」
差出人の名前がなく、コウくんは首を傾げている。
「エルサからよ。最後のイヤガラセだって」
「は? アイツ……また、ちぃに何か言ったのか?」
「大丈夫。わたしも負けずに言ってやったから」
「え?」
「コウくんにとって、魚類が一番なのはわかってる。彼らは海で、わたしは陸でコウくんを幸せにする。コウくんがいくら魚類を好きでも愛し合えないんだからって。ちなみに、この封筒にはコウくんの元カノの写真が入ってるらしいわ。浮気されてフラれたんだって?」
「は? 元カノ? そんなのいないけど」
コウくんは、きょとんとした顔で首を傾げる。
「えー? 本当に?」
「本当だよ。ちぃがいるのに、なんでほかの女をかまう必要があるの?」
嘘を言っているようには見えない。
けれど、写真という証拠がある。
「潔白を証明するから、さっさと開けて」