2年後の君にさよならを
1-1:知らせ
深夜二時
廃屋となったビル
屋上
八階建てのここから飛び降りれば微塵もないでしょう
この時間帯
下に人がいないことは何度も通って確認済みでした
ゆっくりと隔たれたフェンスを乗り越え始たそのとき
ふいにスボンのポケットが震えだしたのです
-こんな時間にかけてくるなんてなにか緊急の連絡だろうか-
そう思いました
フェンスの内側へ戻り画面をみると
高校時代の知人の名前がありました
私は電話にでてしまいました
-最後に話すのがこの女になるなんて-
これも運命かと、乾いた笑いがこぼれました
「もしもし、久しぶり」
『久しぶり、あのね、、、』
電話越しでもわかりました
彼女は泣いているのです
「どうしたの、なにかあったの?」
私はできるだけ優しくゆっくりと彼女へ問いかけました
『…』
少しの沈黙
『鎖陪が、亡くなったの』
「…」
「そう」
私はそっと電話を切りました
それ以上何も知りたくなかったのかも知りません
思い出したくなかったのかもしれません
鎖陪《さべ》という男は私の元恋人です
終わり方は自然消滅です
連絡も取らなくなった頃に
私が一言
-さよなら-
というメッセージを送ったのが最後でした
なんというタイミングなのでしょう
電話に出ず
早く飛んでしまうべきでした
一番思い出したくない人間の死を
最後に知るなんて
これが私への罰だとでもいうのでしょうか
そうだとするならそれも受け入れましょう
私はまたフェンスを乗り越え
今度はなんの迷いもなく
体重に身を任せ
落ちました
不思議とゆっくりと時間が流れているような感覚
今までの人生を振り返ります
なんだかんだ
平凡に幸せな人生でした
地面に着く直前
最後に思い出したのは
彼の優しい笑顔でした。
廃屋となったビル
屋上
八階建てのここから飛び降りれば微塵もないでしょう
この時間帯
下に人がいないことは何度も通って確認済みでした
ゆっくりと隔たれたフェンスを乗り越え始たそのとき
ふいにスボンのポケットが震えだしたのです
-こんな時間にかけてくるなんてなにか緊急の連絡だろうか-
そう思いました
フェンスの内側へ戻り画面をみると
高校時代の知人の名前がありました
私は電話にでてしまいました
-最後に話すのがこの女になるなんて-
これも運命かと、乾いた笑いがこぼれました
「もしもし、久しぶり」
『久しぶり、あのね、、、』
電話越しでもわかりました
彼女は泣いているのです
「どうしたの、なにかあったの?」
私はできるだけ優しくゆっくりと彼女へ問いかけました
『…』
少しの沈黙
『鎖陪が、亡くなったの』
「…」
「そう」
私はそっと電話を切りました
それ以上何も知りたくなかったのかも知りません
思い出したくなかったのかもしれません
鎖陪《さべ》という男は私の元恋人です
終わり方は自然消滅です
連絡も取らなくなった頃に
私が一言
-さよなら-
というメッセージを送ったのが最後でした
なんというタイミングなのでしょう
電話に出ず
早く飛んでしまうべきでした
一番思い出したくない人間の死を
最後に知るなんて
これが私への罰だとでもいうのでしょうか
そうだとするならそれも受け入れましょう
私はまたフェンスを乗り越え
今度はなんの迷いもなく
体重に身を任せ
落ちました
不思議とゆっくりと時間が流れているような感覚
今までの人生を振り返ります
なんだかんだ
平凡に幸せな人生でした
地面に着く直前
最後に思い出したのは
彼の優しい笑顔でした。